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無駄を避けるため、不動産売買と構成しないで、営業譲渡と構成したとすれば、宿泊予約の引き継ぎ、買掛金の引き継ぎまではコストを抑え、営業を1日も休むことなく円滑な引き継ぎが実現します。
しかし、この場合、商品棚卸、有体動産の引き継ぎ事務量はなにも変わらず、登録免許税、不動産取得税の税率は同じ、肝心の従業員の解雇、退職金の支払い、買主による再雇用ないし新規雇用にはなんの変化もありませんが、低減化できるコストの額はしれています。
これを会社分割の方法で行うと、どうなるでしょうか。
仮に10のホテル全部を一括して買い取ってもいいという会社が現れたとすれば、売却するのはホテルという不動産ではなく、承継会社の株式です。
このため、まず消費税が非課税になります(法第6条、別表第1,2号)。
この株式の売却によって、法人税法上、「税制適格」の適用はなくなり、課税は必至ですが、債務超過であれば税金の支出があるわけではありません。
ホテルの1つ1つに、買主が別だとしても、法律問題は同じで、少しコストが高くなる程度の違いでしょう。
ホテル経営の主体に変更が起きますから、宿泊予約(契約)の引き継ぎは必要でしょうが、それは売主と買主問の内部関係にとどまり、経営主体が宿泊予約客にいちいち変更したと知らせる必要はありません。
また、温泉湯口権、商品棚卸、有体動産の引き継ぎの必要はなく、登録免許税は軽減され、不動産取得税は免税になり、解雇がなくなり、退職金の支払いがなくなります。
ホテルが10もあれば従業員の数は数百人になるはずですから、退職金の支払いがないだけでも大きく費用を節約できます。
従業員の解雇がない分、既往の退職金債務の引き継ぎが発生することにはなりますが(退職給与引当金の引き継ぎにつき、法第58条8項、法法令108条の2)、目先現金の支出があるわけではありません。
つまり、会社分割の方法をとれば、会社は分割されても人は分割されないのです。
それだけでもコスト削減に大きく貢献することは確かでしょう。
よく、「会社分割ができる」とか「会社分割はできない」という表現が使われますが、これはどういう意味でしょうか。
実際的に考えると、会社分割ができないということには次にあげる3つの観点があります。
第1に、新設分割にともなう「分割計画書」、または吸収分割にともなう「分割契約書」を株主総会に提出したところ、総会で否決されたという場合です。
会社分割ができないどころか代表取締役の責任を問われる事態で、よほど総会準備がなっていなかった場合です。
第2に、新設分割による設立の登記または変更登記、あるいは吸収分割にともなう変更登記申請書類を管轄登記所に提出したが受理されなかった場合です(商業登記法第89条の6,89条の7,89条の9)。
新設分割の法律上の効力は設立した会社の本店において登記ができたときに、吸収分割の法律上の効力は営業承継会社が本店において吸収分割登記をしたときに発生しますから(商法374条の10,374条の25)、株主総会で議決承認されたとしても、登記官が拒否した以上、会社分割はできないということになります。
第3に、登記が受理されて分割の効力が生じたとしても、その登記の日から6カ月以内に新設分割無効の訴え、あるいは吸収分割無効の訴えが提起され(374条の12第1項、374条の28第1項)、裁判で敗訴した場合です。
商法の条文上は、この6カ月間は「分割の日」から起算することとなっています。
「分割の日」というのは、「登記の日」とは違い、新設分割では374条第2項8号、374条の17第2号9号の「分割を為すべき時期」のことをいうものと一応は考えられます。
また、「分割を為すべき時期」というのは、議題として会社分割を審議する株主総会からみた会社分割効力の発生予定日のことであって、確定した日のことではありません。
訴えの提起の期間は、だれがみても判然と算定できないとまずいので、「登記の日」のことだと理解することができます。
要するに、株主総会の特別決議で議決承認され、分割登記が登記所で受理されて、6カ月間、裁判が起きてこなければ、会社分割はできたといえます。
裁判が起きてくるのはよほどのことですから、実務的には株主総会で承認され、登記できれば分割できたのとほぼ同義です。
中小企業の場合は、株主総会で承認されるということは、事実上、株主総会に提出できるだけの書類が作成できたということと同義であり、登記が受理されるか否かも、登記申請書類並びに添付書類が法律が要求しているとおりに作成できたか否かと同義です。
というわけで、会社分割ができるということは、実務的には書類ができていたかどうかに帰着します。
株式分割にあたって、株主向けにはどういう書類を作成しなければならないのでしょうか。
まず、株主は、会社分割に反対であれば、株主総会の前に書面で「反対だ」と通知したうえで、株主総会に出席して議決のさいに「反対だ」と発言することができます。
そして、株主総会で会社分割が承認された場合は、会社に対して「自分の持ち株を買い取れ」と請求することができます。
そのさいの買い取り要求価額は、会社分割が承認されなかったときの公正価額です。
また、株主は、会社分割が法律に違反している場合には、会社分割無効確認の訴訟を起こし、原告となる資格があります(374条の12第2項、374条の28第3項。
なお、資本金億円以下の株式会社の監査役については、監査等商法特例法1条の2,25条の特例があります)。
こうしたことから、会社分割をするさいには、株主に対して意見表明するのに必要な書類を、株主総会に先立って作成しておく必要があります。
新設分割であれば「分割計画書」、吸収分割であれば「分割契約書」です。
両者の内容はほぼ同じですから、ここでは「分割計画書」を検討してみましょう。
「分割計画書」には、法定された事項を記載しなければなりません(374条)。
重要な事項は、次のとおりです。
定款-これは、もちろん分割新設会社乙の定款です。
株式の種類数-乙会社が発行する新株です。
現在は実に数多くの種類株式が認められていますから、これを確定するのは結構たいへんです。
株式の割り当てに関する事項-すでに述べたように、分割会社甲に新株を割り当てることを「物的分割」と呼び、法人税法では「分社型分割」と呼んでいます。
また、甲会社の株主に割り当てることを「人的分割」といいます。
税法では「分割型分割」と呼んでいます。
法人税法では、分社型分割を現物出資と同じように扱い、分割型分割を合併と同じように扱っています。
「税制適格」にはこまかな要件がいくつもありますが、要点は、分割会社の支配的株主からみて、会社分割によって会社の外部に流出した財産に対し、自己の支配がなくなったか、まだ続いているといえるかどうかです。
続いているといえれば「税制適格」で非課税ですが、いえなければ「税制非適格」で課税されます。
資本金および準備金に関する事項-乙会社の資本金は、株式会社である以上、1000万円以上でなければ会社分割の実務と留意点鎧なりません。
資本金額は、乙会社に移転する資産額と同様、乙会社に移転する負債額の差(純資産)です。
乙会社の設立登記のさいに登録免許税が課税になりますし、税は資本金額を基準に算定しますから、おのずから資本準備金が多くなります。
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